STEP 3 GUIDE
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#税金の仕組み
退職金の税金は、なぜ受け取り方で変わるのか
01
退職金は「別枠」で計算
給料などとは合算せず、退職金だけで税額を出します。しかも控除を引いた残りの半分だけに課税される、優遇された所得です。
02
1年にまとまると税率が上がる
所得税は金額が大きいほど税率が上がります。会社の退職金と共済を同じ年に受け取ると、高い税率の段に乗りやすくなります。
03
年を分ければ別々に計算
受け取る年を分ければ、それぞれの年で計算します。合計が同じでも、1年あたりの金額が小さくなり、低い税率で済むことがあります。
所得税の速算表を見る(令和8年分)
| 課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
#2回に分ける
社長で1回、会長で1回。受け取りの流れ
社長を退いて会長になるときに1回目、会長を退くときに2回目を受け取ります。「社長を退任して会長になる」という区切りがあるから成り立つ方法です。社長のまま2回受け取ることはできません。
1回目社長を退任
後継者に社長を譲り、会長へ。社長としての退職金を受け取ります。
原資の例:会社の内部留保
会長として
在任
会長の期間働き方を変える
報酬を大きく減らし、経営の実務は新社長へ。実態として退いていることが大前提です。
理想は
5年以上
2回目会長を退任
会長を退くときに、別の退職金として受け取ります。
原資の例:小規模企業共済

娘お父さん、会社は私に任せて! 会長になったら、ゆっくりしてね

社長……ゆっくり、とは週に何日だ

娘週1〜2日です。
#5年ルール#2回に分ける
1年空けと5年空けで、差が大きく変わる理由
前の年から数えて4年以内に別の退職金を受け取っていると、非課税の枠(退職所得控除)のうち、期間が重なる部分は2回目で使えません。これが通称「5年ルール」です。
ただし、1回目で枠を使い切っていない場合は、使い残した分を2回目で使えます。1回目の金額が枠の中に収まる人は、1年空けでも損はしません。
1〜4年で受け取る
重なる期間の枠が差し引かれ、2回目の枠は「重ならない期間の分」だけになりがちです。それでも、同じ年に受け取るより税率が下がる効果はあります。
5年以上空ける
非課税の枠が復活し、共済の加入期間まるごとの枠が使えます。2回目の税金が大きく下がります。
※2026年1月から、iDeCo・企業型DCの一時金を「先に」受け取った場合は、この期間が9年(10年ルール)に延びました。会社の退職金→共済の順番は、これまでどおりです。

たぬき何年空けるといくら変わるかは、試算の表で見られますよ

社長……5年、待とう。
#会長の実態
一番大事な注意点。「形だけの退任」は通らない
書類の上で「社長を退任した」「会長になった」となっていても、働き方が社長時代と変わっていなければ問題になる可能性があります。

奥さんあなた、会長になったのに、どうして毎日会社に行くの?

社長……ちょっと、様子を見にな

奥さんそれ、税務署さんにも「社長のまま」に見えますよ
否認されると、どうなるか
社長退任時に支払った数千万円、場合によっては数億円の退職金が、「実際には退職していない」として退職金と認められないリスクがあります。経費として認められず、税負担が一気に増えかねません。
| 項目 | こうなっていると危ない | 会長になったら、こう整える |
| 役員報酬 | 社長時代とほぼ同じ | 半分、あるいは3分の1程度に減らす |
| 対外的な折衝 | 銀行との打ち合わせ・交渉を続けている | 銀行交渉などは新社長が担当する |
| 会議・契約 | 重要な会議に出て、契約書に押印している | 重要な会議・契約も新社長が対応する |
| 出社日数 | これまでどおり毎日出社している | 週1〜2回程度に減らす |
| 部屋・デスク | 社長時代の専用の部屋を使い続けている | 専用の部屋・デスクも見直す |
※「こうしていれば絶対に大丈夫」という明確な基準はありません。税務調査ではいろいろと聞かれるため、あらかじめ整えておくことが大切です。
#共済なし
小規模企業共済に入っていない場合
共済がない場合、2回目は「会長を退くときに、会社から払う会長としての退職金」になります。このとき気をつけたいことが3つあります。
- 2回目の勤続年数は「会長だった期間」だけ社長時代の期間は1回目で清算済みなので、2回目の非課税の枠は会長期間の分(1年あたり40万円・最低80万円)だけです。
- 会長期間が5年以下だと「半分にする」優遇がない役員として5年以下で受け取る退職金は、控除を引いた残り全額に課税されます。1年や2年で会長を退くと、2回目の税金が思ったより高くなります。
- 金額が大きすぎると経費にならない会長の期間と報酬に見合わない額は、「過大な役員退職金」として会社の経費に認められないおそれがあります。
共済なしで2回に分けるなら、会長として6年以上残るかが分かれ目になりやすいです。試算で「入っていない」を選ぶと、年数ごとの差を確認できます。
#1回がよい
1回で受け取るほうがよい人もいる
- 退職金が非課税の枠に収まる人1回でも税金がかからないなら、分ける意味はありません。
- 会長として残る実態を作れない人後継者がいない、完全に引退したい、つい毎日口を出してしまう。形だけの会長は否認のリスクがあり、1回できれいに退くほうが安全です。
- 試算で差が小さかった人差が数十万円なら、会長として残る手間や、早く使えるメリットのほうが大きいこともあります。
- 共済がなく、会長として長く残らない人会長期間が5年以下だと2回目の優遇が小さく、分けても得をしにくくなります。

社長分ければ得、じゃないのか

たぬき人によるんです。だから試算するんです
#早く使いたい
早く受け取って使う・運用する場合
5年空ければ手取りは増えますが、1年後に受け取って早めに運用したほうが、5年後の資産の合計が大きくなるケースもあります。住宅資金や相続対策など、すぐに使い道がある人も同じです。
まず試算で「5年空けると手取りがいくら増えるか」を確かめ、その金額と、早く手元に置くメリットを天秤にかけてください。
#会社を売る#事業承継
会社を売る・次の世代に継ぐ場合
会社を売る(M&A)なら、必ずしも多額の退職金は必要ありません。売値とのバランスで考えるので、受け取り方より先に「いくら払うか」を決めることになります。
次の世代に株式を引き継ぐなら、退職金を支給することで会社の株価が下がり、株式を移しやすくなる場合があります。株価をどこまで下げたいか、いくらまでなら退職金を払っても問題ないかを、役員報酬の設定までさかのぼって税理士さんと設計しておくことが大切です。
#iDeCo・DC
iDeCo・企業型DC・はぐくみ基金を使っている場合
これらを一時金で受け取ると退職所得になり、会社の退職金と非課税の枠を取り合います。受け取る順番で、空ける年数が変わります。
iDeCo・DCが先 → 退職金が後
10年 空ける
2026年1月から(以前は5年)
退職金が先 → iDeCo・DCが後
19年 空ける
組み合わせが複雑になるため、このページのシミュレーターには含めていません。受け取る予定がある場合は、税理士さんに相談してください。
#退職金規定
退職金規定は作っておくべき?
役員の退職金規定は、作っておいたほうが安心です。一方、従業員の規定は必ずしも必要ではありません。規定を作ると、条件に当てはまる従業員全員に支給する義務が生じる場合があるためです。